東北新社は2024年9月24日にアクティビストファンドである3Dインベストメント・パートナーズからの買収提案の協議・交渉を打ち切った旨を公表しておりました。(協議・交渉の打ち切りに関する記事はこちら)
守秘義務契約書(以下、「NDA」)の内容に関する同意ができなかったことが打ち切りの理由として説明されておりましたが、これに対し昨日、3Dは両社コメント付きのNDAのドラフトを開示いたしました。
3Dは東北新社とのNDA締結の交渉に関して「協議の過程でTFCからご提示いただいた諸条件は、一般的な実務や民法の原則とは異なり、対等な両当事者間で合意するような内容とはなっていないように見受けられました。」と評価しております。
画像はNDAの一頁目です。非常に生々しいやり取りですが、実務のインサイダー(内側)を知れる貴重な資料ではないでしょうか。
※ 3D Investment Partners Pte. Ltd.「3Dインベストメント、株式会社東北新社との守秘義務誓約書に関する協議・交渉経緯についての補足説明を実施」より
3Dは公表の理由として以下の説明をしております。
TFCの株主の皆様や資本市場のみならず、TFC取締役会、特別委員会、ファイナンシャル・アドバイザーやリーガルアドバイザー等アドバイザーの皆様、及び従業員の皆様に、改めて当社の考えをお伝えいたしたく、本件協議・交渉の経緯について、TFC公表書面に補足して参考となりますよう、両社のコメント付き守秘義務誓約書ドラフト(2024年9月5日TFC送付版。以下「本ドラフト」といいます。)を開示させていただきます。
※ 3D Investment Partners Pte. Ltd.「3Dインベストメント、株式会社東北新社との守秘義務誓約書に関する協議・交渉経緯についての補足説明を実施」より引用
また、NDAと併せて、両社のコメント全文及びその要約の比較表を開示しており、主要な論点がまとめられており、以下の7点をあげております。
① 3D のみが守秘義務を負うものとなっていたこと
② 3D 代表者が当事者となることで個人として損害賠償責任を負担するものとなっていたこと
③ TFC が 3D の守秘義務違反を通知した場合には 3D において守秘義務違反がなかったことを立証可能な証拠を示して反証しない限り 3D が損害賠償責任を負わなければならないものとなっていたこと
④ 3D による守秘義務違反がなかったことの立証の成否は裁判所等の公正・公平な手続きが担保された機関ではなく、TFC が判断する ものとなっていたこと
⑤ 実際に発生した損害に対する賠償責任を負う旨の規定に加えて 10 億円の違約罰を定めていたこと
⑥ 3D が負担する守秘義務が無期限となっていたこと
⑦ 本件提案より前に 3D が TFC から受領したあらゆる情報についても遡って守秘義務を負うものとなっていたこと
※ 3D Investment Partners Pte. Ltd.「守秘義務誓約書における主な論点についてのコメント比較表より」
東北新社の許可を得た上での行動なのか不明ですが、NDAのドラフトをそのまま開示するのは前代未聞であり、3Dとしても一定のリスク(①東北新社からの反発、②今後の投資先がNDA締結を断る材料の一つとなる)を取った行動ではないでしょうか。